伊達モン
東北を語る上で欠かせない歴史的トピックである奥羽越列藩同盟と明治新政府の対立は、類推的には縄文と弥生大和の対立にまで遡及し得るが、記号的には星紋 ( 五芒星 ) と日の丸 ( 或いは菊花紋 ) の対立である。現代では、かの星紋は博物館で飾られるくらいで、街頭で掲げられているのを目にすることなど滅多にない。しかし、東北の澄んだ夜空に星は不滅である。仙台の青葉城へ至る通り ( 青葉通り ) の広瀬川に架かる橋の付近では、伊達氏の家紋の一つである九曜紋の旗がいつも Navi いている … という話を以前した。今回は、そのトリビア的補考。 新潟県立歴史博物館「戊辰戦争 150 年」展のチラシより抜粋 (ちょっとフレーズが厳しい…) 「九曜紋」は、中央に丸、その周囲に八つの比較的小さな丸を配置したもので、星を表している。大陰太陽と五つの惑星、即ち日月火水木金土が七曜。これに、蝕を引き起こす二つの星、羅睺星と計都星 ( 現代天文学的には月の昇交点と降交点 ) を合わせて、九曜という。九曜の起源はインド占星術で、ナヴァグラハという九つの天体神である。中国で編纂された『宿曜経』に訳され、弘法大師空海によって日本に伝えられた。 九曜紋 興味深いのは、九曜紋の中央の大きな丸は、太陽ではなく、土星を意味すること。これは、五行説 ( 木火土金水 ) において、土が中央に配置されることの敷衍であろう。天体の主役は、必ずしも太陽や月とは限らない。バビロンの至高神マルドゥック、ギリシャ/ローマの主神ユピテル/ゼウスは、木星神である。 さて、九曜紋は、伊達だけでなく多くの武家で用いられており、特に下総の千葉氏は、その思想的基盤である妙見信仰と合わせて有名である。九曜が直接に北極星を意味するわけではないが、例えば、仏教の星まつりで用いられる曼荼羅の一つは、北極星を尊格化した妙見菩薩が本尊であり、周りに北斗七星および九曜が配置される。星辰信仰は全天体的に拡張し得るのだろう。一方、伊達氏のメインの家紋は「竹に雀」である。この阿吽の雀の可愛らしさが、天空のキャンバスの星々を食ってしまうのだから面白い。 また驚くことに、伊達氏の家紋としては他にも、皇室の紋章でありパスポートに用いられて...